出雲紀行3

さて、出雲の続きを。
自分の備忘録として書いているので、日記としては面白くないかもしれません。
なるべく、覚えているうちに細かく細かく書いておきたくって。

三日目。朝は中々いい晴天で、びっくりするぐらい眩しかった。
この日は、朝レンタカーを借りて、日本海の海岸へ海水浴をしにお出かけ。

宍道湖と中海の間の道はとっても気持ちよくって、彼曰くドライブがしやすい良い道だそう。
海水浴場付近に到着、近くで「更衣室、シャワー、海の家がタダですよー」と客引きをしていたところの駐車場に停める。
さっそく水着に着替えようと「更衣室はどこですか?」と聞くと、「そのシャワーの中だよ」と指差した先には仮説トイレサイズの小さいシャワーが・・・。
中を見てみると中がびしょびしょで、とても着替えられそうになかったので、「着替えられるところを探そう」と海水浴場へ向かいました。
海の家でも更衣室、というか、フィッティングルーム?のようなところはあったのですが、普通の着替えならまだともかく、水着への着替えにはちょっと抵抗があるところ。
悩んで、近くの壊れたシャワーの個室を借り、なんとか着替え完了。
わたしは黒地に白い線の入った、露出度はちょっと低めのビキニ。中国で一目ぼれして買ったのですが、ちょっと珍しいデザインで、彼のお気にも召したよう。
彼は白地にカラフルなドットのトランクス。もっとスポーティーな水着かと思っていたので(ビキニではないとは思ったけれど(笑))ちょっと意外。でも、似合ってました。
あと、普段彼はトランクスでなくボクサーパンツ派なので、なんとなく新鮮でした。えへへ。

「海だー!」と、真っ先に彼が走っていく。彼は海水浴というよりシュノーケリングをしたかったらしく、シュノーケリングのグッズを持って。
わたしはゆっくり日焼け止めを塗って、浮き輪がわりのビーチボールを持ち、彼の後を追い、海に入ると・・・「つ、冷たい!!!」

気温は高いのに、午前中だからか、意外と水は冷たく、最初入るのに苦労しました。

水が冷たくてもじもじしていると、ばしゃばしゃ水をかけられて、なんだか水に慣れてしまったり。
そういえば、海水浴で水のかけあいなんて、恋してる!って感じで、なんだかいいな、と思ったり。

そんなこんなしているうちに、彼はどんどん沖へ。
日本海は太平洋より一気に深くなったりするから、あまり遠くへは行っちゃダメだよ!」
「あの浮きって、その先に行っちゃいけないってことかなあ」
「ダメに決まってます!ダメですからね!」
「はぁーい」
なんて、母親と息子のような会話(今思うと)をしつつ、暫くちゃぷちゃぷ

すると、「痛っ!」「え?」「なんかよくわかんないけど、ちょっとピリピリしない?」
なんのこっちゃ、と思いながら、ぼけーっと浮いていると、わたしの手の脇をミミズみたいなものが三本、通り過ぎて、
「痛っ!!」
「やっぱり。ここ、クラゲいるよ」
「クラゲなの?これ。そんなに痛くはないけれど・・」(昔おおきなクラゲにさされたことがあって、物凄い痛みだった)
「さっき目で見た。クラゲだ」

さっき見た、三本のミミズのようなものがクラゲだったみたい。

ちょくちょくこのクラゲさんには刺されちゃって・・・最終的に、一番強いのに刺されたところは、これを書いている今(一週間後)でもまだちょっと腫れています。ぐぬぬ


あまりにクラゲが多いのと、そろそろお腹がすいたので一旦引き上げ。お昼にイカ焼きとポテトフライ、ラムネを。
海ってこういうしょっぱい!分かりやすい味!のが食べたくなるのよね!


お腹がおちついたら、再び海へ!
さっきはビーチボールにしがみついて泳いでいたのだけれど、彼が疲れたときに捕まれないのがちょっと心配だったので(彼がおぼれたらわたしには助けられないし)浮き輪を借りることに。
彼がシュノーケリングで海中に潜るたびに遠くへいっちゃうので、(足にフィンつけているから動くスピードが全く違う!)彼が潜るたびに影を探して、せこせこ泳ぐわたし。
だって、何かあったとき、近くにいないと助けられないもの。

彼は彼で、潜るたびに「ひらめがいた!」だの、「イカと一緒に泳いだよ!」だの、子供のように報告してきてくれる。疲れたときはわたしの浮き輪につかまって、わたしがせこせこバタ足で岸まで届けたり。

そして、ちょっとした岩場があったので、「魚がいるかもしれない!」と近くにいってみると、デコボコで登りがいのありそうな石・・・。
案の定彼が裸足で登り始めて、わたしははらはら。大丈夫だったけれど、やっぱりクライミングって、危険と隣り合わせのスポーツなのだな、と実感したり。

まだ泳ぎたそうな彼を、「波が高くなったからもうだめ」と制して、16時には海から上がりました。
シャワーを浴びて着替えて、帰り道、ちょっと寄り道をしてわたしのリクエストの足立美術館へ。
車に乗って走り始めてすぐに雨が降ってきて、「速めに上がってよかったね」なんて話をしながら。
ここは彼の好きな横山大観の絵がいっぱいあって、しかもわたしの好きな枯山水の綺麗な庭園があるということで、是非とも行ってみたかったのです。
行ってみると、本当にこれ、自然!?と思うような美しい庭園。葉っぱひとつ落ちてないぐらいに整備されています。
庭園は入って遊んでなんぼ、と思うわたしと彼ですが、あの徹底した美しさにはため息をつくばかりでした。
そして、庭園を眺めながらお抹茶をいただける茶室があり、そこで一休み。
雷が遠くから聞こえ、しとしとと雨が降って露に塗れた庭園は、それはそれは美しかった。

あと、絵のほうも素敵でした。美術館に「この中で一つだけあげる、と言われたらどれを選びますか?そういう視点で見てください」と書いてあって、面白い鑑賞の仕方だと思いました。
いままで、美術館で「どれが一番好きだろう?」という視点で観た事がなかったので。

足立美術館を出て、ホテルへ。ホテル指定の駐車場にとめようとすると、なんとその駐車場が満席で、物凄い行列!
雨もどんどん強くなり、もうスコール状態になっていたので、「もうあきらめて社内でまったり待とう」と、ふたり社内でぐだぐだ。
そうこうしているうちに駐車場があいて、結局車停めるだけで30分ぐらいかかったかも・・。

夕食は前日に引き続き、「馬やど別館」。この日は絶対に行きたかったので前もってカウンターを予約しておいたら、前日と同じ席を空けておいてくれました。
全く同じ席につき、待ちに待ったご飯タイム。

前日「うまいぞ!」とおばさまが絶賛していた念願のビーフシチュー!
席にお皿が置かれてテンション上がっていると、ちらりとお皿を見たおばさまが「何であんなもん出した!」と激怒しだした。
「てめぇのチンコみてーなお粗末なモン出してんじゃねーぞ!!!!!!」(本当に言った)

おばさまのすごい剣幕に、わたしたちは「た、食べていいのかな・・」「お、おいしいよねこれ・・」「うん・・」と縮こまっていたのだけれど。
おばさまがつかつかとわたしたちの前に来て、「すいません、そのシチューの御代、いただきません」と。
「それはアタシは満足いかない。そんなもんでお金は取れません。」
「いや、でも、その・・」
「プライド捨てたら料理人じゃないからね。そのお皿のモンは食べてくれていいです。でも、それでお金は取れませんから」
「じゃあ、こうしませんか?」
「何だい?」
「マスターの、納得のいくビーフシチューを作ってください。それに御代を払います。」

何となくこの粋な返し(?)に惚れ直しつつ、美味しいお食事をいただきました。
あ、そうそう、出しなおしてもらったシチューは確かに、最初出されたものより見た目が立派でした。
味はすこーし後のほうがやわらかい気がしたけれど、どっちも美味しかったな。
ちょっと癖のあるおばさまだけれど、何となくわたしは好きでした。おばさまが育てたトマトもびっくりするほど美味しかったし!

宿に戻ると彼はまたすぐにバタンキュー。
わたしもお酒が入ってかなり眠くなっていたので、彼の背中にジェルを塗ってあげたあとは、ちょっとだけゲーム(モンハン。今更彼がはまっているので一緒にやってる)をやって就寝。

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彼は本当に不思議なひとだ、と思う。

子供みたい、と思えば、急に大人の顔を見せる。大人なときでも、コテコテの理系のはずなのに、「松江に来るならこれを読まなきゃ」と言って小泉八雲全集を読み、美術館では横山大観に食いつく。
自分勝手に勝手に遊んでいると思えば、いちいちこっちに戻ってきて「あそこにイカがいた」「クラゲ見たよ」「綺麗な石あったから取ってきたよ」なんて言う。

不思議な人。いつまで見ていても、飽きないひと。

写真:足立美術館「生の額縁」(庭園を切り取って一枚の絵に見立てる窓)と絵の中の彼。